お坊さん数珠つなぎ

WEBサイト編集委員会の西谷妙咲がインタビュアーとなり、
千葉県佐倉市にあります千手院副住職の惠下拓宥師にお話をお伺いしました。

第8回 お坊さん数珠つなぎ 惠下拓宥師

惠下拓宥(えげ たくゆう)

1979年11月2日生まれ
(深田恭子と一緒)

千葉四号仏青会員

千手院(せんじゅいん)副住職

西福寺(さいふくじ)住職

お寺の紹介

西 谷

今のご住職さん(惠下さんのお父さん)が五十七世だそうですね。

惠 下

そうです。歴史だけは古いんですよ。でも昔のことがよくわからなくて……。秘仏にしているご本尊の千手観音さまのご開帳を、60年に一度するんですけど、これも最後のご開帳がいつだったのか、あいまいなんです。平成30年にお寺が創建1300年を迎えるので、その記念法要に合わせて、ご開帳も行おうと考えています。本堂も改築したので、落慶法要も一緒にする予定です。

西 谷

大法要になりますね。

惠 下

どうなるんでしょう。まだしばらく先の話ですけどね。

ここ(お寺のあるところ)は井野と言って、昔からある地名なんです。周りはどんどん開発されて住宅地になったりしているけど、ここだけは変わりませんね。昔ながらの、緑の多い村という感じです。
だから、お散歩の方や、歩く会の方がたくさんいらっしゃいます。歩く会というのは字の通り、この辺りを歩いてまわる会のことです。一つだけでなく、たくさんの団体があるんです。200人規模の団体もしょっちゅういらっしゃいますよ。

開発されたきれいな街並みに、ぽっかりと残っている緑の場所というのが、ここ井野の特徴です。

西 谷

たしかに、駅前はとても開けていましたけど、しばらく行くと緑の一本道に入りました。

惠 下

そうそう、道を一本入っただけで、田んぼが広がったり、山があらわれたりするんです。
中学生の頃は、「あの山の中に家なんてあるの?」って同級生によく言われましたよ。僕が住んでるのに(笑)新興住宅地に引っ越してきた人たちは、井野のことまではあまり知らないみたいでしたね。

境内にももちろん木が多いので、掃き掃除は毎朝の日課です。銀杏(いちょう)や榧(かや)に、椎(しい)の木と、いろいろあります。なかでも、一番厄介なのは欅(けやき)です。細かい葉っぱが掃きづらくてしょうがない。最近はブロワ―といって、落ち葉を風で飛ばす機械を購入しました。それでもいい運動になりますね。

西 谷

お寺では、社会福祉法人も運営されていると聞きましたが。

惠 下

ええ、社会福祉法人千手会といいます。知的障害のある方が対象の中心です。住職が理事長を務めて、僕は評議員をしています。詳しくはホームページをご覧になってください!

→「社会福祉法人千手会ホームページ」
http://www13.ocn.ne.jp/~senjukai/maintop.html

改修中の本堂

改装後の本堂

お坊さんになったきっかけ

惠 下

高校一年生で得度して、すぐにお盆の棚経に行ったんです。そしたらお檀家さんが嬉しそうにしてくれて。これはもう期待に応えるしかないなと思いましたね。

寺で生まれ育つと、生活の中で自然にいろんなことを覚えるし、お檀家さんやお参りの方ともしょっちゅう触れ合います。だから、ドラマチックな理由があるわけでもなく、本当に自然な流れでここまできました。

うちの1歳7か月(取材時)の子供は、本堂に行ったり鐘を鳴らしたりすると、気づくと一緒に合掌しているんです。そういうのを見ていると、お寺で生活していると、自然とお坊さんらしくなっていくんだなと感じますね。

息子さんを見守る仏さま

力を入れている活動

惠 下

できるだけ境内に出て、お檀家さんやお参りの人、お散歩の人と話をするようにしています。歩く会のみなさんには、こんなところにお寺があったんだね、なんて言われます。周辺には新興住宅地が広がっているので、地元のことを知らない人もまだ多いみたいです。
他にも、地元の消防団や社会福祉協議会に入っています。お寺以外にも、地域にも貢献していきたいですね。

今は小学校のカリキュラムに職場体験というのがあって、うちのお寺にも小学生が来るんですよ。6年生の授業の一環のようです。お寺に来て、お坊さんは普段どんなことをしているのかを、一緒に体験します。
職業体験なので、お勤めや、本堂や境内の掃除はもちろんします。でも、一番力を入れているのは、お寺は楽しいところだと知ってもらうことです。ドッヂボールをしたりキックベースをしたり、僕も一緒になって全力で遊びます。

お寺は楽しいところだ、遊んでもいいんだってわかると、後日、また遊びに来てくれる子たちもいますよ。

西 谷

職業体験は、何年くらい前から受け入れているんですか?

惠 下

もう5年くらいになるかな。近くにある小学校、3校とも受け入れています。
子供が好きということもあるし、次世代への教化の一環でもあります。お寺に遊びに行こう!と思うくらい、身近に感じてもらいたいですね。

子供たちの遊び場

お寺は仲間の拠り所

惠 下

生まれも育ちもこの井野なので、小、中学校時代からの仲間とは今でも交流があります。大人になるにつれて、それぞれに環境が変わってばらばらになってしまったんですけど、井野に帰ってくればいつものお寺に恵下がいる、とみんな思ってくれています。

昔からみんなお寺に集まって来ていたので、ガキ大将のような立場だったのかもしれません。その流れで、今も集まる予定をたてたり、企画したりしていますね。

西 谷

最近はどんなことを?

惠 下

キャンプ場でバーベキューをしましたよ!
仲間の一人に、料理人になったのがいるんです。仲間には料理人や保育士さんがいて、魚や肉を持ってきては調理をしてくれたり、子供の面倒を見てくれたりします。

西 谷

バーベキューでプロの味が楽しめるんですね。

惠 下

そうですね。
こうやって楽しいことが出来るのもうれしいし、お寺がみんなの拠り所になっていることもとてもうれしいですね。お寺にいて良かったと思うことの一つです。

春の千手院

座右の銘

惠 下

中学校時代の担任の先生の受け売りですが、「清濁併せ持つ、海のように……」です。
その先生、すごく恐かったんです。僕も年相応にやんちゃだったので、ビシバシやられました。だからなのかな、先生の言葉が今も忘れずに残っています。

先生自身が、まさに清濁併せ呑むような人でした。世の中きれいごとばかりじゃないですからね。善も悪も分け隔てなく受け入れる、心の広い、度量の大きい人になりたいです。

取材の様子(左:西谷委員、右:惠下師)

 

夫婦での趣味

惠 下

僕たち夫婦は旅行が好きなんですよ。しょっちゅう行きます。しかも、嫁さんは元添乗員です!

西 谷

どんなところに行くんですか?

惠 下

国内国外問わず、いろんなところに行きますよ。
モアイ像で有名なイースター島はおもしろかったですね。あそこはバギーに乗って、島を一周できるんです。そんなに大きい島ではないので、一日あれば十分まわれます。ただ、人が暮らすには容易ではなさそうでした。地形や気圧の関係なのか、雷がすごいんです。雨も、スコールなんてもんじゃない。とても激しく降るのでびっくりしました。

それから、マチュピチュには思い入れがあります。実は、嫁さんにプロポーズした場所なんです。マチュピチュは、到着するまでの道のりがすごく大変なんですよ。でも、その大変なことも一緒に乗り越えられて楽しく過ごせるんだから、この人となら一生一緒にいられるなと思って……なんてね(笑)
他にも、エジプトでラクダに乗ったり、アルゼンチンにイグアスの滝を見に行ったり。

奥 様

あの水の量はすごかったよね。

惠 下

煩悩も吹き飛ぶね。

西 谷

お二人とも、語学はお得意なんですか?

惠 下

僕は片言ですが、嫁さんは中学3年間をアメリカで過ごしてるんですよ。

奥 様

むこうの中学生が話すくらいには話せますけど、本当に日常会話のようなレベルです。

惠 下

この前も、フランス人に道を教えてたよね。

奥 様

それは、あなたが「行け行け!」って言ったんじゃない!

惠 下

かっこいいなって、後ろから見てました。

奥 様

この人はね、そんなに英語が話せるわけでもないのに、なぜか自分からグイグイ行くんですよ。それも外国人相手に日本語で。
この前は、エレベーターで一緒になった外国人さん相手に、日本語で「何階ですか?」って。そしたらその人、「SEVEN」って答えてて、なぜか通じてるの。

惠 下

そうそう。僕も「OK!OK!」ってね(笑)いろんな人とコミュニケーションをとるのは楽しいですからね。

マチュピチュにて

仏青の皆さんへ

惠 下

仏青といえば、やはり若さです。行動力があって、かつ決断力が早い。それを活かして、いろんなところにどんどん出て行って、全国に仲間をつくってほしいなと思います。

鐘をつく惠下師と息子さん


写真の通りかっこいい惠下さん。でも容姿だけではなく、人を引き付ける温かさのある人となりも見せてもらえました。
惠下拓宥師、とても楽しいお話の数々を誠にありがとうございました。