お坊さん数珠つなぎ

真言宗豊山派のお坊さんをリレー形式でご紹介する新コーナー。
「なんでお坊さんになったの?」「お坊さんになってよかったことは?」
などなど、素朴な疑問をWEB委員がインタビューしました。

第1回 お坊さん数珠つなぎ 髙橋將雄仏青会長

ご紹介

髙橋將雄(たかはし しょうゆう)

昭和47年10月1日生まれ

真言宗豊山派仏教青年会 第28代会長

全真言宗青年連盟 第30回結集東京大会
実行委員長

東京都中野区 禅定院副住職
http://www.zenjouin.com/

沼袋幼稚園 園長
http://www.numabukuro-youchien.jp/index.html

お寺の紹介

髙 橋

東京は中野区にございます。中野という地名の由来はいろいろと諸説あると思いますがおそらく武蔵野の中ごろだからではないのかなと……。

八 幡

お寺で幼稚園を運営されているそうですが、お寺の幼稚園ならではの行事等はなさっているんですか?

髙 橋

もちろんしています。

三仏期といって、一つは灌仏会。幼稚園としては花祭りですね。それから12/8の成道会。そして涅槃会。その他に施餓鬼の行事を、お寺の施餓鬼の日に行います。

八 幡

お寺の施餓鬼法要に子どもたちが参加するんですか?

髙 橋

いえ、お寺の施餓鬼法要は2時半からなので、子どもたちの施餓鬼法要は午前中に行います。

普段はない施餓鬼壇と、そこに果物やお供物が上がっている様子を見せて、みんなはいろんな命をいただいて生きてるんだよ、その命に感謝をしよう、ということを伝えています。

禅定院山門

休日の過ごし方

八 幡

休日があまりなさそうですよね。

髙 橋

たまに何もない日があれば、家族で外食に行くくらいですね(笑)
ちなみにうちの子どもたちは、家族でディズニーランドに行ったことって一度もないんです。かわいそうな子どもたちですよね。この間、アンバサダーホテル(※1)で劇があったそうなんです。うちの母親が子どもたちを連れて行ってくれたんですけど、そのホテルをディズニーランドだと思ってますからね、うちの子どもたちは。そういう奇跡の子どもたちです。

※1 アンバサダーホテル……ディズニーアンバサダーホテル。:東京ディズニーリゾート内にあるディズニーホテル。

沼袋幼稚園

お坊さんになったきっかけ

髙 橋

それはやっぱり縁なんじゃないですか。最初は非常に抵抗しましたけどね。
私の父は三男なんですけど、継がざるを得ないような状況で始まりまして。
私も4人兄弟ではあるんですけれども、そのうち女性が3人で、成り行き上ほとんどが仕方なくって感じです。

ただ得度が早かったんです。僕、小学2年生の時に得度したんです。だから小学生の時から棚経にまわっていました。今でも棚経にまわるところは、僕が最初、小学生のころに祖父と一緒に行っていたところで、いまだに僕がまわっているんですよ。その頃からずっとやっているから、やめるという考えになれないんですよね。

修行でつらかったこと

髙 橋

当時の大正大学は寮制で、その夏休み期間に加行があったんです。あの頃はまだ部活あがりだったので、空腹というのが非常につらかったですね。高校3年生まで部活でラグビーをやっていて、1日8食から9食食べてたので辛かったです。

禅定院の牡丹庭

座右の銘

髙 橋

最近少し気にしているのは、平常心ということですね。元来性格が荒いものですから、なるべく怒らず、騒がずしていたほうがいいのかなと。

あと、長いものには巻かれた方がいいかな(笑)

お願いしますと言える謙虚な気持ち、これは大事ですね。そうやって今の執行部があるわけですから。
常にお願いをする、頭を下げる。そうすると色々なものが集まってくるんです。ありがたいことですね。

得意分野

八 幡

子どものお相手がすごく上手ですよね。

髙 橋

そうですか?

最近思うのは、引っ込み思案の子が多いですね。きっとその子のことを、周りの人たちがなんでもしてあげちゃうんでしょう。してあげる側がお姉ちゃんやお兄ちゃんだと、親としてはそういうのを見て、うちの子どもたちもちゃんと下の子の面倒を見られるようになったな、よく育ってくれてるなと思うんです。でも逆に下の子からしてみると、自分で何もできない子になってしまうんです。「小1プロブレム(※2)」といって、小学校にあがった時に先生たちが一番苦労する。あれ、困るんですよね。

八 幡

日ごろから子どもに触れているから、そういうことも詳しいんですね。

髙 橋

子どもなんていうのは単純ですからね(笑)

八 幡

うふふふふ。

髙 橋

単純ですから。

でも、上に立つ人がうまいもの、まずいものすら知らなかったら、上には立てないから。そういう意味では大人はもちろん、子どもも見聞を広めていくことが大事でしょう。

※2 小一プロブレム……小学校に入学した子どもたちが、集団活動になじめなかったり、学校生活のルールが理解できなかったりすることから、授業中に席を立って歩きまわったり、騒いだりする現象。自分の意思で授業を放棄する学級崩壊とは異なり、家庭や地域社会のしつけが不十分な状態で育てられてきたのが原因と考えられています。

楽しかったこと・つらかったこと

髙 橋

どちらもありますよ。

地域に根差した、いつでも人が出入りしているお寺なので、どちらもあるのだと思います。

ひらかれたお寺にするために寺子屋みたいにしましょうという人がいますが、僕はそんなことはしないんです。何故ならそれが当たり前だと思っているから。

当然いろんな噂話が入ってきて、いやな思いをしたりすることもあります。あの人こんな風にお寺さんのこと言ってたよとか、告げ口してきたりする人もいます。

でもお寺はやっぱり、近くにありて遠きものじゃいけないんです。近くにあるからこそ、地べたがつながってるからこそのお寺だと思うので。

そういう意味では、幼稚園をやってるということもあるし、町会の事務所なんかもやっていて、わりと人が出入りしています。こういうことで場所貸してくれませんか、と来た人には、どうぞ使ってください、というような形にしています。そうしていると、いいこともあれば、もちろん悪いこともあります。

沼袋幼稚園の元気な園児たち

お坊さんにならなかったら?

髙 橋

僕が元来なりたかったのは営業マン。自社でつくったものでも他社でつくったものでも、人が作ったものをいかによく売り込むかというのをやってみたかったんです。

八 幡

なんだか説得力があるんで、すごくいい営業マンになる気がします。

髙 橋

営業の人ってすごくいいと思うんです。自分の担当地域でここのメシが安くてうまいなとか、そういうのを話のきっかけにしていったり、いろんな目を養っていけますからね。

そういうのがいいんじゃないかなと思ってます。それから、自分の能力次第で、自分の時間が作れるのはうらやましいですね。お寺は休みがないからね。

八 幡

そうですね、一年中お休みなしですもんね。

髙橋会長と八幡氏

仏青の皆さんへ

髙 橋

仏青ホームページでは「仏教青年会とは」というのがうたわれています。

ただそこで青年の定義がなされているわけではないので、あの人青年じゃないでしょという人が仏青にいたりするわけです(笑)最初に出席し始めたころはびっくりしたんですけれども(笑)今は性別も問わず、非常に開かれた会だと思います。ただ、いくら積極的に参加してくださいといっても、その積極性がどこから出てくるかは難しい問題です。

興味を示すような媒体がないと、出て行こうよ、とはなかなかならないし、出て行っても何のメリットもないじゃない、ということになると思うんです。
我々はよく言われるんです。「いろんな会をやっているけど、その会に入ってなんのメリットがあるの?自分は独立独歩でやってるからいいんだよ」と。
これは宗派でも言えることで、「賦課金払って何のメリットがあるの?」ということになります。
宗派は「それは徒弟制度とか師弟教育の制度とか、その恩恵を受けてる」と言うかもしれません。

でも仏青にそこまでのものがなかなかない中で、なぜ人が集まってくるかというと、何かメリットを求めるんじゃなくて、自然と人のつながりができていくというところを求めて集まってきているんだと思うんです。

いずれ必ず人とのつながりは必要になってきます。これは同級生というグループだけでは成し得ないことだし、地域というグループだけでも成し得ないことです。

僕は、ぜひ仏青に来てくださいとは言いませんけれども、来てみればきっと「こういう名前の人と話をした」という経験が積み重なります。

ふと気づいたら、隣近所だけじゃなく、いろんなところに話ができる仲間がいつの間にか増えていて、その仲間、人とのつながりこそが大きな財産になっていくのではないのかと思います。それが大事なんじゃないかなと僕は思います。

なにも財産を掘り起こせということではありませんが、眠っている財産ならば掘り起こしてみてほしい。気づかないまま終わっちゃう場合がありますからね。

仏教青年会も、制度をひいてしまうと特定の人間しか関われないような部分がどうしても今まではあったかもしれません。
でも、たとえ情報の発信だけでもホームページから受け取ってもらったり、ブログなどでこの人は今こんな思いをしているんだなっていうのを感じてもらえれば、ある特定の人たちには、そこがすごく入りやすい窓口かもしれないですね。

八 幡

1回目にふさわしいお話をありがとうございました。


髙橋会長、素敵なお話をありがとうございました。
第2回は髙橋会長からのご紹介いただいたお坊さんにインタビューさせて頂きます!お楽しみに♪

インタビュアー:八幡明心
文:加藤孝綾
校正:藤田妙和