法話

散歩

小沼隆昭 南光院副住職(群馬県板倉町)/群馬邑楽仏青会員

町の社会福祉協議会で運営している福祉作業所で職業指導員として介助の仕事ももっています。
勤め始めて9年になり、その間に利用者が2倍に増えて賑やかになりました。

また数年前に「重度障がい者デイサービスセンター」が併設されて、家族の方の介助の負担軽減を目的として、地域での日常生活上の場所を提供しています。

今回は利用者のS君のことを話したいと思います。
簡単な紹介ですがS君はとても重い知的障がいを持っています。
身体的な障がいはほとんどみられなくて、身長は俺より少しデカくて体重は俺よりメダボ。
車やバスの乗り物が好きで、電車はドア閉まると大声で泣いてしまったり少し苦手。
おじいちゃん子で毎朝のように軽トラでドライブしています。
来所をすると畳の部屋に行きゴロンと寝転んでしまいます。でも、お出かけは好きで作業所の仕事の納品に同行出来ると分かると声を出して、身体を揺すって大喜びします。

椅子に座って机に向かい、機能回復訓練と5してブロックの差込をする時は、すぐ立ち上がって畳の部屋に逃げ出そうとします。しかし!個別指導で保護者の意向もあるので…S君ごめんネ。
それと運動不足改善で散歩をほぼ毎回してます。夏の暑い時も、冬の空っ風も汗だくになってもマフラー巻いて防寒しながらも。

S君も室内よりも屋外に出ての散歩が好きみたいで、声をかけると車でお出かけかも???と勘違いしながらも、嬉しそうに立ち上がり畳の部屋から玄関まで歩いてきたりします。

散歩は、俺が前を歩いてS君が後をついてきたり、途中で立ち止まってしまったら、手を引いたり後ろから押してみたり、歩くまで待って居たりと。施設の周辺の田舎道をぐるっと30分程度歩きます。

以前研修会で、ある講師の先生に「お尻を向けて畑仕事してる人にでも、声を掛けて挨拶をしなさい」と言われたことがありました。それくらい地域の人達に、自分達から受け入れてもらえるようにしなけばということでした。
それ以来、散歩の時に行き会う方には挨拶、車やオートバイを避けてすれ違う時には会釈を心がけることにしました。
戻って来る時に、同じ敷地内には「老人福祉センター」も在りお風呂やカラオケ、踊りを楽しみに利用をしてる老人の方に会うことがあります。
そんな方々に挨拶をすると、おじいちゃん子のS君は大きな身体を揺すって声を出して笑って喜びます。

そんなある時に、顔見知りな常連の利用者さんに「いつもニコニコだねぇ」とニッコリ微笑まれて挨拶を返されたことがありました。
S君のニコニコを見てるから一緒の散歩が楽しくてしかたない、S君を介助していたのじゃなくて俺のほうが施しを受けていたのかなと。

S君の素直な笑顔は、とってもすばらしい和顔施だと思います。

それだからこそ、沢山の方々がS君のことを理解して、声をかけてくれる気がします。

これからも笑顔で

S君のメタボ解消の為にも…

2人で楽しく散歩をしていこうと思います。