法話

しぜんと仏のこころ

五十嵐秀和 如意輪寺住職(愛知県南知多町)/愛知仏青会員

私たちが子供の頃、夢のように描いていたことが今では現実化されてきて、そしていざ、その時が訪れると何の疑問もなく、普通に生活している自分に気がつきます。また、様々な情報が頭の中で行ったり来たり…。何を信じてよいのやら。事の正邪を推し量るのは難しいですね。
日進月歩の勢いで進化し続けている科学や文明に取り残されぬように、私たちは必死になりすぎているような気がします。そんな現代社会において、私たちの心はどのようになっているのでしょうか?
情報化社会、スピード重視の生活にふと後ろを振り返ってみると、心の中にある大事なものを一つ、また一つと落としているような気がします。

私たちのご先祖さまは、天を仰ぎ、地に伏したと伝えられています。その行為は、自然というやさしさに包まれながらも、時として人間ではとうてい太刀打ちできない脅威も体感していた証です。現代の私たちよりもはるかに自然との距離が近かったのです。文明が発達し便利さを追求した結果、私たちと自然との距離は随分と離されてしまったのではないでしょうか。私たちも失われつつある自然に対する感謝の気持ちを見つめ直すといいですね。
幸い、わが国では四季を通じて、心を見つめなおす機会に恵まれています。ぽかぽかとした陽気に動植物の息吹を肌で感じ、さんさんと照りつける太陽の下で、お子さんやお孫さんたちの笑顔に触れ、はらはらと舞い散る街路樹の葉に時の移りゆく様を想い、しんしんと降り積もる雪を両の足でしっかりと踏みしめ、自然と共に過ごしているはずです。
そして、四季の中には折々に仏教行事があります。その行事に家族で出かけられるといいですね。

春秋のお彼岸やお盆、ひな祭り、端午の節句など四季を通じてご先祖さまに感謝し、家族の安全を祈り、その祈る姿をお子さんやお孫さんに見せることは、何よりも尊い事だと思います。
そして初詣は、一年の始まりですから神社・仏閣にお参りでかけ、多くの方がお願い事をされると思います。
ただ「お願いします」だけの一方通行ではなく、その年の誓いを立てると良いですね。
仏さまや神さまにお会いして、「約束」を交わして下さい。

私たち一人一人の心の中には、『仏性』という仏の種が宿っています。その仏の種に様々な人との出会いという《水》を注ぎ、様々な体験という《光》をあて、自身にしかない《花》を咲かせていきましょう。
日々慌しい今だからこそ、外からだけでなく、自身の内に訊ねてみましょう。
その過程には自然を敬い、ご先祖さまに感謝する。それが、しぜんと仏の心を育てていくことにつながるのですから。