法話
うるう年〜夢の叶え方〜
島田希保 善楽寺副住職(高知県高知市)/高知仏青
今年(平成28年)はうるう年です。うるう年といえば?そう、オリンピックの年です。
ブラジルのリオデジャネイロにてオリンピック、そしてパラリンピックが開催されました。ブラジルは日本からすると地球の裏側。睡魔と闘いながら応援していた方も多いのではないでしょうか。しかし本当にどの競技も素晴らしかったですね。
オリンピックのメダルは史上最多の41個!パラリンピックでは24個!おおいに盛り上がりました。歓喜の涙あれば悔し涙もあり。なにより選手の一生懸命頑張る姿は本当に美しく、感動と元気をもらいました。
うるう年といえばオリンピックの年ですが、私のようなお四国の人間にとってはそれだけではございません。うるう年といえば、逆打ちの年なのです。
逆打ちとは、四国八十八ヶ所霊場を88番から1番へと逆に巡拝していく参拝方法です。うるう年に逆打ちすると御利益が何倍もある!といわれており、うるう年は団体で参拝されるお遍路さんも、ほとんどが逆打ちといっても過言ではないほど多くの方が逆打ちのお参りをされます。
突然ですが、皆さんは衛門三郎という方をご存知でしょうか?
お遍路の元祖となる男性で、「逆打ち」の始まりとなった伝説の主人公でもあります。
今の愛媛県松山市に位置する、荏原(えばら)の荘の大長者だった衛門三郎。お大師さまが立ち寄られた際の自らの非礼を詫びるため、お大師さまを追いかけるようにお遍路に出たのですが、なかなかお大師さまに追いつくことができませんでした。お遍路を20回まわったところで「そうだ!追いかけてもダメなら、逆にまわってお遍路をしてみよう。どこかでお大師さまに出会えるはず!」と、霊場をさかのぼるように逆にお参りをすると、無事お大師さまに会うことができた。このような伝説が、お四国では未だ根強く信仰されています。
衛門三郎が逆打ちでお大師さまに出会うことができた。伝承ではその年がうるう年であったとの説があり、うるう年に逆打ちをすればお大師さまにお会いできるほどの御利益をいただけると信じられるようになったのです。
お大師さまの言葉に、「遐か(はるか)なるを渉る(わたる)には邇き(ちかき)よりす」とございます。遠大な目標も、身近なところからはじまる、という意味です。
オリンピック選手は金メダルを。衛門三郎はお大師さまに会うことを。それぞれ夢のような目標をかかげてもそれだけでは終わらせなかった。ここが、普通の人と違うところですね。毎日コツコツ、何年も何年も。厳しく辛いと思う時も決して歩みをやめなかったことが、はるか彼方にある夢をたぐりよせたのでしょう。
継続は力なり。この言葉を聞くと、飽き症の私は「そりゃーわかっちゃいるけれど、なかなかできないよ!」とついアレルギー反応をおこしてしまいます。でもお大師さまのお言葉をヒントに見方を変えれば、小さな一歩でもいいから前へと歩んでいれば、いつか大きな目標へとたどり着くということですよね。そうとらえれば、私達にも夢のある話ではないでしょうか。
大きな目標は、小さな今日の一歩から。私は、少しお休みしていた楽器の習い事でもまたはじめてみましょうか。夢は発表会で弾くこと!でも皆さん、大切なことは積み重ね。私のお得意の三日坊主にはくれぐれもお気をつけ下さいね。