真言宗豊山派仏教青年会

写仏のススメ(後編)

5.写仏をしてみる

お手本の下絵に紙を重ねたら、ゆっくり時間をかけて写します。筆の勢いはいりません。一見たどたどしく思われますが、丹念に引いた線は、はやく描いた線よりも秘めた力を感じさせます。

写す順序に決まりはありません。まずは気軽に写せそうな部分から写します。そして筆に慣れてきたら、細かい部分に進んでください。お顔は難しいので緊張しますが、心を静め、念じながら写しましょう。

大事なことは、途中で線が乱れたと思っても最後まで写し、完成させることです。完成すると、細部の失敗はほとんど気になりません。写仏することは、単に正確に仏さまを写すだけでなく、仏さまに近づくことですから、絵としての上手下手は問題ではありません。

子どもたちが写仏する時はサインペンや筆ペンでもよく、個性的、現代的な仏さまが写せます。写すということで没個性ではないかという問題がありますが、線は写す人の心を表現しますから、写すといっても各人各様で、その違いに驚かされるほど、写仏は個性的なものなのです。

6.写仏の作法

筆を取る前に、まずお経をお唱えします。お唱えするお経に決まりはありませんが、仏さまのお姿を写させていただくことへの感謝の気持ちをもって、お唱えしましょう。

写仏をする時、一枚一枚に、故人の冥福を祈る人もいます。また、仏さまを描くこと自体が楽しいという人もいます。写仏をする時の心構えは人それぞれで、決まりはありません。

写仏をすることで、仏さまのお名前やお姿、そのお心など、いろいろと知ることができます。それは精神面で、とても貴重な体験となるでしょう。その中に、自分らしい写仏の作法の発見があります。

あなたらしい写仏の作法を、みつけてみましょう。

7.写仏の楽しみ

仏さまのお姿を墨で写す以外にも、写仏の楽しみ方はいろいろあります。仏さまのお姿と写経とを組み合わせたり、写した仏さまに色づけしたりと様々です。当宗派の写仏講座では2年に1度展覧会を催し、完成した作品に表装を施して展示しています。

写仏であれば、曼荼羅の制作も夢ではありません。また、仏さまを写仏し、その周囲に霊場のご朱印を押せるようにレイアウトすれば、自分だけの納経軸の完成です。

ただし、霊場、寺院によっては、納経帳やお軸の様式に決まりがある場合がございます。必ずご確認の上、お参りください。

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8.写仏のご利益

人の願いがそれぞれであるように、ご利益も人によって様々でしょう。体の悪い部分が治ったり、恋人ができたり、仕事がうまくいったり、例えたらきりがありません。

では、写仏ならではのご利益はないのでしょうか。もちろん、病気が治ったり、仕事がうまくいくこともご利益でしょうが、写仏のご利益とは、ずばり、描いた仏さまと私は、実は同じだったのだ、と気づくことなのです。

病に苦しむ人の背中をさすってあげたことがある。悩んでいる人に手を差し伸べたことがある。ご自分の人生の中で、そんな場面が幾度となくあったはずです。その行いの一つ一つは、まぎれもなく仏さまと同じ行いです。

筆を通して、仏さまと一つとなる。描き終えた後に思い返してみてください。今までの人生の中で、病に苦しむ人の背中をさすったあなたはお薬師さまで、悩んでいる人に手を差し伸べたあなたは観音さまだと感じるはずです。それこそが写仏のご利益といえるでしょう。

筆を用いて仏さまを写す。あなたの心の中に、もともと住んでいらっしゃる仏さまを、ぜひ見つけてみてください。

参考 『豊友第48号』 難波淳郎 「写仏のすすめ(一)」 昭和55年6月30日

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