仏さまを写す。そこに「上手・下手」はあるのでしょうか。「この仏さまは上手にかけたなぁ」「今回は失敗だ」、写仏が終わった後に聞こえてくる言葉です。
じつはこれ、「第1回」でお伝えしたこと。「写仏の描き方~実践編~」は、今回が最終回です。これまでにお伝えしたことを踏まえて、自分なりの仏さまを描いてみたとき、以前とは違った言葉が出てきてくれれば幸いです。
第1回でもお伝えしたことの繰り返しになりますが、写仏に上手い、下手はありません。どんなに線が乱れていようが、描き損じがあろうが、仏さまが怒ることはありません。一生懸命に心を込めて描いた仏さまは、みな等しく素晴らしい仏さまです。
しかし、あえて言うなら、写仏に「良い・悪い」はあるかもしれません。
仏さまを描くときに、何を思っているのか、描き終ったあとに、何を考えているのか。これは、とても大切なことです。誰かを貶めるようなことを考えて描いているようでは、どんなに綺麗にかけても、良い行いをしたとはいえないでしょう。
仏さまを描き写す「写仏」、お経を書き写す「写経」も、仏教でいうところの善行(良い行い)です。仏教の根本的な教え「衆善奉行・諸悪莫作」(人々の為に良い行いをして、悪いことはしてはいけません)のとおり、悪いことを考えながら写仏をしていては、良い行いにはなりえません。自分自身の心の安寧のため、他の誰かの幸せのために描く仏さまには、当然ながら「上手い、下手」はないのです。