お坊さんには髪がない。それが多くの人のイメージでしょう。悟りを目指す私たちは出家の証として髪を剃ります。しかし、仏さまを見てみると、髪の毛を剃っている仏さまは少ないです。仏さまを描いていくにあたり、髪の毛は必ず描くといってもいいでしょう。細かい線になることが多いので、ゆっくり丁寧に描くことが大切になってきます。
髪の毛のことは、きっと皆さんのほうが詳しいでしょう。髪には生えている方向があります。頭皮から毛先に向かって生えているので、描くときも、根元から毛先に向かって筆をはらうように描くと、髪の流れが表現しやすくなります。
図にあるように、顔と髪の境目が分かりづらい仏さまもいます。その境を一本の線で描いてしまうと、顔の丸みが強調されてしまい、どことなく平面的に見えてしまいます。顔がしっかりと描けると、仏さまの優しさが表現できるので、ぜひ面倒くさがらずに、しっかりと境目を表現しましょう。
写仏の場合、色をつけることはありません。白地に墨で描かれた髪は、ともすると衣の線と区別がつきません。立体的にみて、どこにあるのかを想像し、周りの衣との重なりを離すなどの工夫をするとわかりやすいでしょう。
ほぼすべての仏さまに備わっている「白毫(びゃっこう)」は、白い丸で表現されていますが、実際には長い毛が丸まっているものです。何も知らずに最後に丸を描きいれるのと、長い毛が丸まっていると理解して丸を描くのとでは大きな違いがあるはずです。